BTOでゲーミングPCを購入する際、多くの人が頭を悩ませるのが「メモリ容量」だ。「標準構成は16GBだけど、32GBにカスタマイズした方が良いの?」という疑問を持つ人は多い。
メモリはゲーミングPCの快適さを左右する重要なパーツだが、容量が大きければ良いという単純な話ではない。自分の用途に合わない容量を選んでしまうと、「必要ない容量に高いお金を払ってしまった」と後悔することになる。
この記事では、ゲーミングPCにおけるメモリの役割から、16GBと32GBそれぞれのメリット・デメリット、自分に最適なメモリ容量を選ぶための具体的な判断基準まで解説する。
この記事を読めば、メモリ容量選びで迷うことがなくなる。
メモリ(RAM)とは?

メモリ(RAM:Random Access Memory)とは、CPUが計算や処理を行う際に、必要なデータを一時的に置いておく場所だ。
例えば、メモリを勉強机、CPUを学生、ストレージ(SSD)を本棚とする。学生が勉強するときに、毎回本棚に参考書を取りに行くより、机の上に参考書や辞書を並べておく方が効率的に勉強できる。
メモリ容量が大きいほどCPUの作業スペースが広くなり、以下のような恩恵がある。
- 複数のアプリケーションを同時に起動しても動作が安定しやすい
- データの読み込みが速くなり、ゲームのロード時間の短縮やフレームレートの安定に繋がる
特に高画質で美麗な3Dグラフィックが売りのゲームでは、メモリ容量が快適なプレイに直結する。
16GBのメモリはやや時代遅れ?
現在のゲーミングPC市場において、16GBはやや時代遅れなメモリ容量だ。
以前であれば16GBは標準的なメモリ容量であり、BTOの多くのモデルに16GBのメモリが搭載されていた。
しかし現在では、最新ゲームのクオリティ向上などに伴い、16GBのメモリでは容量不足となってきている傾向にある。
実際、BTOでは32GBのメモリを搭載したゲーミングPCが主流になりつつあり、一部の下位モデルのみに16GBのメモリが搭載されていることが多い。
16GBメモリのメリット
- コストパフォーマンスが高い:32GBと比較して価格が安いため、PC全体の予算を抑えられる。グラフィックボードなど、他パーツに予算を回したい場合に有利だ。
- 多くのゲームの推奨スペックを満たすことが多い:eスポーツ系ゲームをはじめ、多くのゲームはいまだに16GBメモリで十分だ。特にフルHD(1920×1080)でプレイするなら、16GBメモリで快適にプレイできることが多い。
- 一般的な用途には必要十分:ブラウジング、動画視聴などのゲーム以外の普段使いであれば、16GBメモリで不足感を感じることはほとんどない。
16GBメモリのデメリット
- 高負荷なマルチタスクには限界がある:ゲームをプレイしながら、攻略サイトをいくつも開いたり、Discordで通話したり、裏で録画ソフトや配信ソフトを起動したり、というように同時並行で高負荷をかけると、16GBメモリでは容量不足で動作が不安定になったり、ゲームのフレームレートが低下したりする可能性がある。
- 一部の高負荷ゲームでは容量不足:美麗グラフィックが売りのゲームをプレイする場合、16GBメモリでは快適にプレイできない可能性がある。特にWQHD(2560×1440)以上の解像度でプレイする場合、16GBメモリでは容量不足になる可能性が高い。
- 将来性への懸念:今後ゲームが要求するスペックが上がっていくと、将来的に16GBでは物足りなくなる可能性がある。
快適さを求めるなら32GBメモリ
現在のゲーミングPC市場において、32GBメモリは標準的な容量になりつつある。
以前までは16GBメモリが標準であり、ミドルクラスのBTOゲーミングPCにも16GBメモリが搭載されていることがあった。
しかし現在ではエントリークラスのゲーミングPCですら32GBメモリが搭載されていることが多く、32GBメモリがゲーミングPCの標準となりつつある。
32GBメモリのメリット
- ほとんどのゲームを最高設定で快適にプレイ可能:現行のほぼすべてのゲームにおいて、メモリ不足を心配する必要がない。WQHD(2560×1440)や4K(3840×2160)解像度でのプレイでも、メモリ容量がボトルネックになる可能性は低い。
- 高負荷なマルチタスクも余裕:ゲームをプレイしながらの配信や録画、動画編集、複数のブラウザタブやアプリケーションの同時起動など、メモリを大量に消費する作業でもスムーズに行える可能性が高い。
- フレームレートの安定化:特にメモリ使用量が多いゲームにおいて、16GBメモリと比較してフレームレートの落ち込みが少なくなり、より安定した滑らかな映像でプレイできる可能性が高い。
- 将来性が高い:現在、32GBもあれば十分なゲームが多いため、今後しばらくは最新ゲームにも対応できる可能性が高い。
32GBメモリのデメリット
- 価格が高い:16GBメモリと比較すると、価格が高くなる。予算に限りがある場合は、他のパーツのグレードを下げざるを得なくなる可能性もある。
- オーバースペックになる可能性もある:フルHD(1920×1080)で、eスポーツ系のような軽いゲームしかプレイせず、マルチタスクをする予定もないという人にとっては、32GBメモリは持て余してしまう可能性が高い。
実際のゲームでのメモリ使用量
Valorant | Microsoft Flight Simulator 2024 | |
---|---|---|
フルHD(1920×1080) | 10.7GB(低設定) 9.6GB(最高設定) | 22.3GB(最高設定) 22.3GB(最高設定+DLSS+MFG) |
WQHD(2560×1440) | 10.8GB(低設定) 9.6GB(最高設定) | 23.3GB(最高設定) 22.6GB(最高設定+DLSS+MFG) |
4K(3840×2160) | 10.8GB(低設定) 9.7GB(最高設定) | 25.7GB(最高設定) 26.2GB(最高設定+DLSS+MFG) |
eスポーツ系の軽いゲームであるValorantでは、どの解像度でもメモリ使用量は10GBほどだ。
シミュレーション系の重いゲームであるMicrosoft Flight Simulator 2024では、フルHDのメモリ使用量ですら22.3GBであり、4Kともなるとさらに増える。
eスポーツ系のように軽いゲームであれば16GBメモリで十分だが、美麗グラフィックが売りの重いゲームであれば32GBメモリが必要だとわかる。
16GBと32GBのどちらを選ぶか迷ったら
16GBがおすすめ | 32GBがおすすめ | |
---|---|---|
主にプレイするゲーム | eスポーツ系 | 最新AAAタイトル オープンワールド シミュレーション |
プレイする解像度 | フルHD(1920×1080) | WQHD(2560×1440) 4K(3840×2160) |
マルチタスク | ゲーム単体がメイン 軽いクリエイティブ作業 | ゲーム配信 高解像度での動画編集 複数アプリの同時起動 |
予算 | 抑えたい | 余裕がある |
将来性 | 数年で買い替えも視野に入れる | 長く快適に使いたい |
求める快適性 | 画質へのこだわりが薄い | 画質へのこだわりが強い |
メモリ増設という選択肢もある
「今は予算を抑えておきたいけど、将来的に32GBにしたくなるかも」という人には、メモリ増設という選択肢もある。
多くのデスクトップPCのマザーボードには、メモリスロットが4つ搭載されている。16GBメモリの場合、8GBメモリが2つ搭載されていることが多いが、後からメモリを付け足すことで32GBにする、というメモリ増設が可能だ。
メモリ増設の際の注意点
- 空きスロットの確認:BTOではメモリスロットが4つあるマザーボードが主流だが、エントリークラスのマザーボードには2つのメモリスロットしかない場合がある。この場合、既存のメモリを取り、16GBのメモリを2つ購入して32GBにする必要がある。
- メモリの相性問題:DDR4やDDR5といった規格、4800や5600といったクロック周波数、容量などが異なるメモリを混在させると、動作が不安定になったり、認識しなかったりする場合がある。増設する場合は、現在搭載されているメモリと同じ型番のメモリを選ぶと安心だ。
- デュアルチャネル:同じ規格・同じ容量のメモリを2枚または4枚セットで使うことで、「デュアルチャネル」という高速化技術が有効になる。増設する際も、デュアルチャネルを維持できるように枚数を合わせるのがおすすめだ。(例:8GB×2 → 8GB×4)
メモリ増設は比較的簡単なアップグレードだが、自信がない場合はBTOやPC専門店に相談してみると良い。
64GB以上のメモリは必要ない
BTOでは、32GBメモリの上に64GBや128GBメモリの選択肢があるが、全く必要ない。
64GB以上の容量はゲームでは使わない上に、3DCGを制作するようなクリエイターしか使うことがないからだ。
「メモリは16GBと32GBのどっちが良いんだろう?」と悩むような人が高度なクリエイティブ作業をするとは思えないため、64GB以上のメモリは不要だ。
まとめ:自分のスタイルに合ったメモリ容量で快適なゲームライフを送ろう
ゲーミングPCのメモリ容量は、16GBと32GBのどちらが絶対的に正しいということはない。
ただし人によっておすすめの容量が異なる。
16GBがおすすめ | 32GBがおすすめ | |
---|---|---|
主にプレイするゲーム | eスポーツ系 | 最新AAAタイトル オープンワールド シミュレーション |
プレイする解像度 | フルHD(1920×1080) | WQHD(2560×1440) 4K(3840×2160) |
マルチタスク | ゲーム単体がメイン 軽いクリエイティブ作業 | ゲーム配信 高解像度での動画編集 複数アプリ同時起動 |
予算 | 抑えたい | 余裕がある |
将来性 | 数年で買い替えも視野に入れる | 長く快適に使いたい |
求める快適性 | 画質へのこだわりが薄い | 画質へのこだわりが強い |
この記事で解説したメリット・デメリット、判断基準などを参考に、自分のプレイスタイル、予算、将来どのようにゲーミングPCを使いたいかを考え、最適なメモリ容量を選んでほしい。
BTOを利用すれば、メモリ以外のパーツにおいても自分に合った構成のゲーミングPCを選びやすい。特にPC初心者にはBTOの利用をおすすめしたい。
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